ハーブの化学の泥沼にはまった話
「この効能は何の化学成分がもたらしていますか?」
「この効能は研究で証明されていますか?」
というご質問は、講座の中でもよく聞かれます。
化学成分のことや効能を証明するような研究結果があると、ハーブへの信頼感が高まりますよね。
ハーブの化学が気になるお気持ち、よく分かります。
実は私は、ハーブを学びたての頃、ハーブの効能をあまり信じていませんでした。
なので、あるきっかけでハーブの効能が化学で証明されていると知った時には大興奮でした。
もっと知りたい!という気持ちになり、「効能の理由となっている化学成分探し」に時間を費やして、研究論文を読みまくりました。
今思えば、ハーブの化学の泥沼にはまっていたと思います。
ハーブの化学の泥沼
ハーブの化学は、調べ始めると終わりがありません。
ハーブの研究のやり方自体に問題があるということにも気づきますし、一般人が手に入る研究論文は限られています。
さらにハーブの化学にはこんな問題もあります。
ハーブは単一成分では働かない
「カモミールの〇〇の成分が美容にいいんです!」
というような表現がされることがありますが、ハーブの効能は単一成分では働きません。
ハーブをとると、一度に何千という化学物質を体に取り込むことになります。
取り込んだハーブの成分と、私たちの体の中の成分が複雑に相互作用を起こして、結果的に効能が現れます。
その相互作用の組み合わせを予測することは科学者でも困難なために、ハーブの効能を科学で確実に証明することは不可能なのです。※1
「効能の理由」よりも「効能の使い方」に目を向ける
ハーブの化学の泥沼にはまり多くの時間を費やした私は、最終的にあることに気がつきました。
「この効能の根拠となっている化学成分は何なのか?」に時間を費やすよりも、
「この効能をうまく活用していくにはどうするべきなのか」に時間を費やすことでこそ、人様のお役に立てるのはないか、ということです。
化学を追及するのは、決して無駄なことではありませんし、悪いことでもありません。
ですが、化学の面を見るのと同時並行で、効能の活用法など「人が使う」ことを考えたハーブのことも一緒に学んでいく必要があると思うのです。
ハーブは実際に「人」に使うことでしか、その素晴らしい力を発揮できないからです。
あなたは本や化学情報で知った「ハーブの効能」を生活で役立てることはできますか?
「ちょっと怪しいなあ」と思われた方は、「そのハーブがどのように使われてきたか」にも目を向けてみてくださいね。
参考文献
※1 『Medical Herbalism: The Science and Practice of Herbal Medicine』by David Hoffmann